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海外相続人調査顛末記

―海外日系人、所在不明者を探し求めての5年余り―
 
 不動産鑑定士の2次試験に合格して30年、(財)日本不動産研究所勤務を経て、福島市で独立開業して25余年となりました。その間、多くの友人、知人、同業者、不動産関連資格者の皆さんのお力を借りながら仕事を続けてまいりました。5年前の春、友人の土地家屋調査士からある相談を持ち掛けられました。福島県土木部の出先工事事務所が進めている道路買収予定地の地権者の1人に海外在住日本人が居り、どうしてもその人の所在がつかめないという相談でした。私がハワイ出身の日系人との共同事業として、企業の英会話研修や、子供の英会話スクール等を運営するささやかな会社(有限会社  インターナショナル・コミュニケーションズ)を立ち上げた直後です。英語を母国語とするネイティブ・スピーカーをスタッフとしてそろえ、実際に使える英会話を、企業や地域で提供するサービスを目ざしたものです。そんな私を応援しようとゆう気持ちもあったのでしょうか、米国の事情にくわしいスタッフがいるなら、昭和の初めにアメリカに渡り、その後親類縁者とも音信不通になっている○○さんを探すことができるのではないかという相談です。
  早速、共同事業のパートナー(マリアン・森口)を伴って道路建設事務所を訪れました。パートナーは日本人男性と結婚して来日し、福島に住んで10余年になる開拓精神旺盛な元ヤンキー娘です。その仕事にチャレンジしてみたいとの意欲が通じたのか、用地買収の担当者は、初対面であるにもかかわらず、内部資料を全面的に提示し、経緯を細かく説明してくれました。
 工事を急がねばならない道路予定地の一部に、明治時代に相続が発生したのに相続登記がなされないままになった土地があり、その土地の相続人の一人が戦前、米国に渡りその後音信不通だという事情です。このような事情のある土地を買収する場合、従来は、判明している相続人に持分相応の代金を支払い、所在不明者の分は保留にしたまま、土地の移転登記は先送りをして、工事は進めるというやり方だったようです。
 しかし、最近は、国土交通省の指導もあり、市民オンブズマンの目も光っているので、所有権の移転登記をしないまま工事を進めることは原則として出来なくなったようです。所在不明者を手をつくして探しても発見できない場合、不在者財産管理人を家庭裁判所で選任してもらい、この不在者財産管理人により移転登記を行うことは可能だし、よく行われているようです。しかし、家庭裁判所も、その際に十分な調査をつくしたか否かを重視するように最近はなっているようです。外務省経由で在外公館や海外日本人会を通じた調査依頼も時間がかかる割には成果は少ないと聞いています。用地交渉の担当者は、いろいろ手をつくしたが解決せず、友人の土地家屋調査士に相談をしたという経緯です。元ヤンキー娘は持ち前のフロンティア・スピリットを発揮し、インターネットを駆使し、国際電話をかけまくって○○さんの子供二人を見つけ出しました。○○さんは15年前に亡くなっていましたが、その子供2人の現住所を探し出しました。2人の相続人は米国生まれ、米国籍であり日本語は全く分かりません。この段階で道路建設事務所とは正式な契約書を交わしました。
 契約締結後、国際電話による主旨説明、英文での文書の取り交しを経て無事移転登記まで終ることができました。所要期間は約四ヶ月、費用は50万円強です。  用地交渉担当者はむろんのこと、道路建設事務所の関係者から大いに感謝されました。
 
  友人とはありがたいものです。土地家屋調査士の友人のちょっとした一言から、多くの関係者に喜ばれる仕事ができたわけです。「持つべきものは優れた友」この言葉をかみしめています。
 その後、用地ジャーナルへの広告掲載への効果もあり、県内外の公共事業関連の用地交渉担当者から30数件の問い合わせがあり、25件の調査依頼を受けました。22件は所在を発見し無事解決もしくは現在用地交渉中です。
  考えてみれば「海外日系人所在不明者の調査業務」は用地交渉の担当者の悩みを解決するだけでなく、土地家屋調査士、司法書士、税理士、行政書士等の土地に関わる専門職の諸先生方の悩みを理解する仕事でもあるわけです。現に、現在相談を受けている事案の一つに大規模な区画整理事業が完了し、立派な住宅団地が完成したが、その一画に40数人の相続人がいるケースがあります。海外で所在不明の一人を除いて一人当たり1000万円余の金銭が支払われたが、一人だけどうしても所在が分かりません。不在者財産管理人を選任し、1200万円余の財産を管理しているが、そのままにしておくことはできないので何とかして探し出して欲しいとの依頼を行政書士事務所から受けました。福島県内の中学卒業時(昭和33年)に母親と共に米国に渡った62歳になる男性です。手がかりが少ないので時間を要するとは思いますが何とか探し出したいものです。米国の場合、インターネットが国の隅々まで普及しているので、それを手がかりに多分見つけ出すことが可能と考えています。
  依頼事案は、当初は主に県内でしたが、メールやFAXを利用すれば全国の同じような悩みをかかえている用地関係者の問題解決にお役に立てるのが分かり、現在では全国各地の照会に対応しております。
 
  海外相続人探しの仕事を通じて印象に残ったことがあります。
  会津盆地の北方にある喜多方市役所建設課からの依頼案件です。80年程前に米西海岸のカリフォルニアに移住した男性の相続人を探す案件で、相続人の一人の氏名と生年月日がはっきりしてたために割りと簡単に兄弟姉妹4人の住所・氏名が判明しました。ところが、道路買収の面積が小さい物件であったため相続人に支払われる金銭は日本円で1人2万円弱にすぎません。米国では日本の土地はすごく高いと評判らしく、金額の面でなかなか納得してもらえませんでした。メールや電話で6ヶ月程やりとりをしていたところ、長姉が突然来日しました。今、成田空港に着いたので喜多方市の現地を案内して欲しいとのことです。五月の連休の初日でしたが、喜多方市役所と連絡を取り、現地案内の手配を済ませ、東北新幹線乗車の手順をくりかえし説明して福島駅で待合わせました。その日のうちに喜多方市へ向いましたが、途中で話すうちに、相続人4人で話し合った結果、自分達のルーツ探しでもあるので、長姉が代表して日本へ行ってみようということになったらしいのです。思い立ったらすぐに実行するのがアメリカ人らしいところで、日本側の都合も聞かず成田に飛んできたということです。喜多方市役所の担当者も休日なのにいやな顔もせずに受入れ体制を整えてくれました。幸いなことに買収予定地のすぐ近くに来日した長姉の従姉妹が住んでおり、その日の夜に劇的な面会となりました。お互いに父親が兄弟であり、話しには聞いていたが現実に会えるとは考えていなかったようで、その喜びようは大変なものでした。翌日には現地を案内し、買収価格についても即座に了解を取りつけることができました。相続人探しは数多く手掛けましたが、世の中のお役に立ったということを実感できた出来事でした。海外の相続人探しのついでに、国内の所在不明者の調査を依頼されることもめずらしくありません。最初は国内調査は当社でなくともできるはずだからとお断りしていたのですが、予算に計上する都合上、一緒に探して欲しいと依頼され、4~5件引受けました。大部分が地方都市の出身者で、上京して数年で音信不通になったケースです。戸籍の附票で最後の住所は分るのですが、その後の所在が不明となっているケースです。ほとんどがワケありのケースで、本人が意識的に連絡を断っているので、最後の詰めがうまくいきません。周辺にはヤミ社会や暴力団の影がチラつくケースが多いようです。ヤミ社会の影をとらえたあたりまで調査するとそれ以上は必要ありません。そこまでで十分です。と云われます。多分、不在者財産管理人の選任に必要な要件はそこまでということのようです。

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用地買収の地権者(共有者)の中に、海外移住後に所在不明となり、探しだせない人がいる。
海外在住の地権者(高齢、二・三世)が日本語ができないため、用地交渉ができない。
現地の慣習、法律等を理解していないので、交渉がうまくいかない。